投資の巨人たちは何を買ったのか、13Fに見るAI・エネルギー・資本市場の次の焦点
投資の巨人たちは何を買ったのか
2026年第1四半期13Fに見るAI・エネルギー・資本市場の変化
バークシャー、ドラッケンミラー、ビル・アックマン、李録のポートフォリオには、それぞれ違う市場観が表れています。
共通点は、相場全体に強気で突っ込むのではなく、自分が確信する構造変化に資金を寄せていることです。
四半期ごとに公開される米国の13F報告書は、著名投資家や大手機関投資家がどの米国上場株を保有していたかを確認できる資料です。 ただし13Fはリアルタイムの売買記録ではありません。 四半期末時点の保有状況が後から開示されるため、現在も同じ株を持っているとは限りません。
それでも13Fが注目される理由は、投資の巨人たちがどのテーマを重視し、どのリスクを避け、どの企業を割安と見たのかを読み取る手がかりになるからです。 2026年第1四半期の動きを見ると、AIインフラ、航空業の収益構造変化、南米エネルギー、ビッグテックの押し目買い、資本市場インフラへの投資が目立ちました。
重要なのは、誰かの保有銘柄をそのまま真似することではありません。 本当に見るべきなのは、彼らがどの産業構造の変化を利益機会として見ているのかです。 つまり13Fは銘柄リストではなく、市場の読み方を学ぶ資料として使う方が合理的です。
1. 13Fから何が分かり、何が分からないのか? 🧾
13Fは、米国で一定規模以上の株式運用を行う機関投資家がSECに提出する保有報告です。 ここから、バークシャー・ハサウェイ、パーシング・スクエア、デュケーヌ・ファミリー・オフィス、ヒマラヤ・キャピタルなどの四半期末ポートフォリオを確認できます。
ただし注意点もあります。 13Fには米国上場株やADRなどが中心に載る一方、海外株の一部、債券、デリバティブ、空売り、現金ポジション、四半期末後の売買は十分に見えません。 そのため、13Fだけで投資家の全体戦略を完全に判断することはできません。
13Fは「巨人たちの現在地」を少し遅れて見る資料です。 売買の理由を直接説明するものではありませんが、どのテーマに資金が向かったのか、どの銘柄から資金が抜けたのかを読む材料になります。
今回の13Fで見える大きな特徴は、投資家ごとに狙うテーマがはっきり分かれていることです。 バークシャーは大型優良株とAIインフラを持つ企業へ、ドラッケンミラーはAI半導体の広がりと南米エネルギーへ、アックマンはビッグテックの一時的な失望局面へ、李録は資本市場インフラと中国消費へ注目しています。
2. バークシャーは何を変えたのか? 🐘
2026年第1四半期のバークシャー・ハサウェイの13Fでは、米国上場株ポートフォリオの規模が前四半期から縮小しました。 一方で、上位銘柄への集中度は高い状態が続いています。 Apple、American Express、Coca-Cola、Bank of America、Chevronなどが引き続き大きな比率を占めています。
注目されたのは、Alphabetへの保有拡大です。 バークシャーはすでに2025年後半にAlphabetを新規保有していたことが確認されており、2026年第1四半期にもその持ち分を大きく増やしました。 一方で、Appleは依然として最大級の保有銘柄であるものの、過去のピーク時に比べると比率は大きく下がっています。
この動きは、単に「Appleを売ってGoogleを買った」という表面的な話ではありません。 より深く見ると、バークシャーがAI時代における資産の質をどう見ているかが重要です。 Appleはブランド、エコシステム、顧客基盤の強さを持つ一方、Alphabetは検索、広告、クラウド、データセンター、AIモデル、半導体設計など、AIインフラと事業基盤を同時に持っています。
バークシャーのAlphabet買いは、単なるビッグテック投資ではありません。 AI時代に大量の資本を使いながら、それを高い収益力に変えられる企業を評価している可能性があります。 ここで重要なのは、AI投資額そのものではなく、投下資本を利益に変える力です。
さらにバークシャーはDelta Air Linesにも新規投資したと報じられました。 これは一見すると意外です。 ウォーレン・バフェットは過去に航空株で苦い経験をしており、航空業を資本集約的で競争の激しい産業として警戒してきたからです。
しかし現在のDeltaは、単に座席を多く売る航空会社から、プレミアム座席、ロイヤルティプログラム、提携カード、顧客データ、法人需要を組み合わせる収益モデルへ変わりつつあります。 航空業の弱点は、機材投資が重く、景気変動に弱く、燃料価格にも左右されることでした。 その弱点を高付加価値サービスとキャッシュフロー重視の経営でどこまで補えるかが投資判断の焦点になります。
バークシャーの動きは、「安い株を広く買う」というより、長期的にキャッシュを生む企業へ絞る動きに見えます。 AlphabetはAIインフラと広告・クラウドの収益力、Deltaは航空業の収益構造変化が評価された可能性があります。
3. Chevron売却は何を意味するのか? 🛢️
バークシャーはChevronを依然として大きく保有していますが、2026年第1四半期には一部を減らしたとされています。 ここで重要なのは、エネルギー株を完全に否定したというより、価格とバリュエーションのバランスを調整した可能性です。
石油メジャーを見るときは、PERだけでは判断しにくい面があります。 原油価格の変動によって純利益が大きく揺れるため、投資家は営業キャッシュフロー、フリーキャッシュフロー、配当余力、自社株買い、資本支出の規律を重視します。
原油価格が上がるとエネルギー株は短期的に強く見えます。 しかし、その時点で市場が将来の高収益をすでに織り込みすぎていれば、長期投資家にとってはむしろ利益確定の機会になります。 バフェット型の投資では、良い会社であっても価格が高すぎれば魅力は下がります。
Chevronの売却は、エネルギー市場の長期魅力を否定する動きとは限りません。 むしろ、原油高で株価や評価倍率が上がった局面で、ポートフォリオ内の比率を調整したと見る方が自然です。
4. ドラッケンミラーはAI半導体の広がりに賭けたのか? 🧩
スタンレー・ドラッケンミラーのデュケーヌ・ファミリー・オフィスは、2026年第1四半期にポートフォリオ全体を大きく膨らませたというより、テーマを選別する動きが目立ちました。 注目されたのは、BroadcomやSTMicroelectronicsのような半導体関連銘柄です。
ここで重要なのは、AI投資がNVIDIAだけの話ではなくなっていることです。 初期のAIブームではGPUが中心でした。 しかしAI需要がデータセンター、ネットワーク、電力制御、専用チップ、エッジ端末、ロボティクスへ広がると、半導体需要もより多層化します。
BroadcomはASICやネットワーク半導体の領域で存在感があります。 大手クラウド企業が自社向けのAIチップや専用処理基盤を求めるほど、カスタム半導体の重要性は高まります。 一方、STMicroelectronicsは電力半導体、マイクロコントローラー、車載・産業向け半導体に強みを持ちます。
AI投資は「GPUを誰が作るか」だけでなく、 電力をどう制御するか、データをどう運ぶか、ロボットや自動車にどう組み込むかという段階へ進んでいます。 ドラッケンミラーの動きは、この需要の広がりを見ている可能性があります。
これは、AIを単なるソフトウェア革命ではなく、物理インフラと産業機器の変化として見る投資です。 データセンター、電力網、車載制御、ロボティクス、産業自動化が結びつけば、AIは画面の中だけでなく現実の設備投資にも広がります。 その時に必要になるのが、GPU以外の幅広い半導体です。
5. アルゼンチンYPFへの投資は何を狙ったものか? ⛽
ドラッケンミラーの動きで、もう一つ注目されたのがアルゼンチンのエネルギー企業YPFです。 YPFはアルゼンチン最大級の総合エネルギー企業であり、同国のシェール資源開発と深く結びついています。
投資テーマの中心にあるのは、アルゼンチンのVaca Muertaです。 Vaca Muertaは世界有数のシェール資源地域として知られ、米国のパーミアン盆地に続く大型シェール開発地として注目されています。 もし生産量が増え、輸送インフラが整い、政治・規制環境が安定すれば、アルゼンチンはエネルギー輸出国としての存在感を高める可能性があります。
ただし、この投資には高いリスクもあります。 アルゼンチンは過去に通貨危機、債務不履行、高インフレ、資本規制を経験してきました。 エネルギー資源が魅力的でも、政治とマクロ経済が不安定であれば、企業価値は大きく割り引かれます。
YPF投資は、単なる石油株投資ではありません。 南米の資源開発、エネルギー供給網の多様化、アルゼンチンの政策改革が同時に進むというシナリオへの投資です。 その分、成功すれば大きい一方、政治・通貨・規制リスクも大きくなります。
6. ビル・アックマンはなぜMicrosoftを買ったのか? 💻
ビル・アックマン率いるPershing Squareは、2026年第1四半期にMicrosoftを大きく組み入れたと報じられています。 アックマンはすでにAlphabet、Amazon、Metaといった大型テック株に投資してきましたが、そこにMicrosoftが加わった形です。
MicrosoftはAI時代の中心企業の一つですが、株価は常に一直線に上がるわけではありません。 市場はAzureの成長率、AI投資の回収可能性、Copilotの競争力、データセンター投資額を厳しく見ています。 売上や利益が増えていても、期待値が高すぎれば株価は失望で下がることがあります。
アックマンの投資の特徴は、優良企業が短期的な懸念で売られた局面を狙う点にあります。 Alphabetは生成AI競争で不安視された時期に、MetaはAI投資とメタバース投資への疑念が強まった時期に、Amazonは成長とコスト構造が疑われた時期に評価されました。 Microsoft投資も、その延長線上にあると見ることができます。
アックマンは、壊れた企業を買うというより、強い企業が一時的に市場から疑われたタイミングを狙う傾向があります。 Microsoft投資の焦点は、AI投資の重さではなく、その投資が将来のクラウド、ソフトウェア、企業向けAI収益に変わるかです。
7. 李録はなぜ資本市場インフラを買ったのか? 🏛️
「中国のウォーレン・バフェット」と呼ばれる李録のヒマラヤ・キャピタルも、2026年第1四半期に複数の新規銘柄を組み入れました。 注目されたのは、S&P Global、Moody’s、MSCIといった資本市場インフラ企業です。
これらの企業は、直接モノを大量に売る会社ではありません。 しかし資本市場が広がるほど必要とされるサービスを提供しています。 S&P GlobalとMSCIは指数、データ、分析サービスで重要な役割を持ち、Moody’sは信用格付けとリスク分析で資本市場の入口に位置しています。
ETFやパッシブ運用が拡大すれば、指数を作り、管理し、ライセンスする企業の重要性は高まります。 またAIインフラ、データセンター、エネルギー、企業買収のために社債発行や証券化が増えれば、信用評価やリスク分析の需要も増えます。
李録が見ているのは、特定の景気循環だけではありません。 世界の資本市場が拡大し、ETF、指数、格付け、データ分析への依存が強まるほど収益機会が生まれる企業です。 これは「市場そのものの成長」に投資する考え方です。
このタイプの企業は、強いブランド、規制上の信頼、データの蓄積、顧客の乗り換えにくさを持つことが多く、長期投資家が好みやすい性格があります。 景気が悪くなれば一時的に発行市場や手数料収入は弱くなりますが、資本市場の長期的な拡大が続く限り、構造的な需要は残りやすい分野です。
8. Tencent MusicとCrocsに見える消費投資の考え方 🛍️
李録のポートフォリオでは、Tencent Music EntertainmentやCrocsも注目されました。 Tencent Musicは中国の音楽ストリーミング、オンライン音楽、ライブ、ファン経済、音声コンテンツといったデジタル消費に関わる企業です。
ここでの投資テーマは、中国が長期的には消費主導の経済へ移っていくという見方です。 中国経済には不動産問題、若年失業、規制リスク、地政学リスクがあります。 しかし一方で、中間層のデジタル消費、娯楽、音楽、ライブ、ファンコミュニティへの支出は、長期的な消費テーマとして残る可能性があります。
Crocsについては、少し違う投資論点があります。 Crocsは高い利益率と強いブランド認知を持つ一方、HeyDude買収後の業績悪化やブランド成長鈍化への懸念から株価が大きく調整してきました。 つまり市場は、Crocs本体の高収益性よりも、買収失敗と成長鈍化を強く見ていたわけです。
Tencent Musicは中国デジタル消費への投資、Crocsは市場が嫌った消費ブランドの回復への投資と見ることができます。 どちらも単純な人気株投資ではなく、消費者行動と企業の収益構造をどう評価するかが核心です。
Crocsの場合、注目すべきは自社株買いとキャッシュフローです。 高い利益率を維持し、余剰資金で株主還元を進められるなら、成長率が低下しても一株当たり価値を高める余地があります。 ただし、HeyDude事業の立て直しに失敗すれば、市場の評価回復は遅れる可能性があります。
9. 巨人たちの共通点は何か? 🧭
今回の13Fを一つの言葉で整理すると、「広く強気」ではなく「選別された確信」です。 市場全体が安いから一斉に買うというより、それぞれの投資家が自分の得意な構造変化に資金を向けています。
バークシャーは、AIインフラを持つ高収益企業とキャッシュフローが改善する企業に注目しました。 ドラッケンミラーは、AI半導体需要の多層化と南米エネルギーの地政学的変化を見ています。 アックマンは、強いビッグテックが短期的に疑われた局面を狙いました。 李録は、資本市場インフラと消費構造の長期変化に資金を向けました。
ここから得られる教訓は、相場の方向を当てることだけが投資ではないということです。 本当に重要なのは、どの構造変化が長く続き、どの企業がその変化を利益に変えられるかを見極めることです。
13Fで大事なのは「誰が何を買ったか」だけではありません。 なぜそのタイミングで買ったのか、その企業の収益構造はどう変わっているのか、市場が何を過小評価しているのかを読むことです。
10. 核心を整理すると 📝
- 13Fは四半期末時点の保有状況を示す資料であり、リアルタイムの売買判断ではありません。
- バークシャーはAlphabetを大きく増やし、AIインフラと高収益事業を持つ企業への関心を示しました。
- Delta投資は、航空業が単なる座席販売からプレミアム・ロイヤルティ・提携収益型へ変わる可能性を見た動きです。
- Chevronの一部売却は、エネルギー株の魅力低下というより、原油高局面での評価調整と見ることができます。
- ドラッケンミラーはAI半導体需要の広がりと南米エネルギー資源の変化に注目しています。
- ビル・アックマンはMicrosoftを通じて、短期的に疑われた優良ビッグテックの回復力に賭けています。
- 李録はS&P Global、Moody’s、MSCIのような資本市場インフラ企業と、中国デジタル消費・消費ブランドの再評価を見ています。
- 全体として、巨人たちは相場全体ではなく、自分が確信する長期テーマへ集中していると整理できます。
📌 今日の経済ポイント
2026年第1四半期の13Fでは、投資の巨人たちが市場全体に強気で攻めるよりも、AI、エネルギー、資本市場、消費という明確な構造テーマを選別している姿が見えました。
バークシャーのAlphabet拡大、ドラッケンミラーの半導体・南米エネルギー、アックマンのMicrosoft、李録の資本市場インフラ投資は、それぞれ違う形の長期テーマ投資です。
13Fから学ぶべきことは銘柄の丸写しではなく、企業の収益構造と市場が見落としている変化を読む視点です。
📝 今日の一言まとめ
投資の巨人たちは相場全体を買っているのではなく、自分が理解し、長く続くと考える構造変化にだけ資金を集中させています。
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- Reuters (2025.11.14) – Berkshire reveals new Alphabet stake, sells more Apple
- Investopedia (2026) – Berkshire Hathaway 13F Q1 2026 portfolio changes
- Seeking Alpha (2026.05.19) – Bill Ackman’s Pershing Square Q1 2026 13F portfolio update
- ValueSider (2026) – Li Lu Himalaya Capital portfolio activity
- HedgeFollow (2026) – Stanley Druckenmiller Duquesne Family Office 13F portfolio
- SEC EDGAR – 13F filings search
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